『(中小零細企業にとっての)良い事業とは何か?』…努力がよりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してください。

同じ努力を続けても、その成果の大小は、その選択する事業、
ビジネスモデルや事業立地によって大きく変わります。努力が
よりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してくださ
い。(中小零細企業にとっての)良い事業について検証してみ
ます。

1.社長(会社)が得意で好きな事業を狙う。

社長が不得手な事業や好きでない事業に手を出すべきではあり
ません。IT音痴な社長が、高度なITリテラシーを求められ
る事業を行うべきではありません。また、ラーメンが嫌いな社
長が、ラーメン屋さんを開業してもうまくいきません。

◎得意なこと、好きなことを事業にする、これは最初に確認す
べきことでしょう。

2.(できるだけ小さい)マーケットサイズの市場を狙う。

BIGマーケットへの参入は、中小零細企業が行うことではあ
りません。今想定しているマーケットが大き過ぎるなら、対象
とするマーケットを敢えて絞り込んでください。
BIGマーケットは、多くのBIGカンパニーが、その資本力
とブランド力を駆使して戦う厳しい戦場(レッドオーシャン)
です。中小零細企業が入り込める市場ではありません。

◎狙うマーケットサイズの大きさが適切か、これも確認してく
ださい。

3.多大な資金を必要としない事業を狙う。

自身で調達できる資金内(自己資金+可能な借入れ)で、一旦
事業が立ちあげられる事業を選択してください。力不相応な資
金計画を立てて、資金さえあれば…このないものネダリは止め
ましょう。ステージを一つずつ超えて行きましょう。
また、事業拡大時に多大な事業資金を必要とする事業、金融事
業・投資事業や粗利益率の低い事業は、中小零細企業が取組む
事業ではありません。

◎必要な資金総額が力相応か、これも確認してください。

4.付加価値の高い(高価格帯)事業を狙う。

大雑把に分類すると、低価格帯ゾーンのBIGマーケット(ロ
アマス)はBIGカンパニー向け、一方、高価格帯のニッチマ
ーケット(アッパーニッチ)は中小零細企業向けです。ミドル
ゾーンやロアゾーンではなく、アッパーゾーンの価格帯を狙っ
てください。1斤200円の食パンマーケットは大手メーカーで寡
占状態ですが、1斤800円の食パンマーケットには、まだまだ空
きがあるはずです。

◎アッパーニッチ(高価格帯の隙間)を狙ってください。

5.オペレーションがシンプル・簡単な事業に仕上げる。

複雑さは高コストの主因です。運営コストを押し上げるだけで
なく、運営者に高いスキルを求めることになります。現場のオ
ペレーションでの差別化ではなく、ビジネスモデルや事業立地
での差別化を目指しましょう。事業の設計図は単純・明快が理
想です。

◎シンプルな運営、シンプルな現場、意識してください。

6.最後に、「週刊東洋経済、2015年9月12日、特集経
営学の教科書」(東洋経済新報社)に寄稿された、「高収益企
業の創り方」(東洋経済新報社、三品和広氏〔神戸大学大学院・
経営学研究科教授〕)の著者である、三品和広教授の記事を引
用して紹介させていただきます。
『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は
一目瞭然だった。「事業立地」がよいということだ。仕事の仕
方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」
の選び方が優れている。事業立地の考え方では、ある市場の中
でどこにポジションするかよりもむしろ、そもそもどの市場を
選ぶかが重要になってくる。…』

一生懸命頑張ること、これは中小零細企業経営者にとって重要
なことです。ただ、これは成功のための必要条件であって、十
分条件ではありません。十分条件は、頑張ることで、社長自身
も会社も、従業員も報われる事業を選定・設計することです。
社長には、この十分条件を検証し続ける責務があります。これ
こそが、経営者に求められる経営力です。この経営力を磨くた
めに費やす勉強時間とお金をしっかり確保してください。努力
がよりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してくだ
さい。

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